三浦醸造所

自然の恵みに感謝し、共に育て、作り味わうこと、
想いを伝えあうことを大切に。

ねさし味噌(豆味噌)

「ねさし味噌」は、嘉永年間の創業当初より醸造を続けている商品でございます。中京地方の豆味噌にルーツを持つねさし味噌は、大豆と塩だけを原料とする独特の香りと風味を有する豆味噌です。当家では、国産丸大豆とにがり成分を多く含んだ食塩のみを原料に使用し、天然醸造長期熟成で製造しております。
醸造は、以下のような過程で行われます。

  1. 大豆の浸漬(大豆を水に浸して充分な水分を含ませる)
  2. こしき(大きなせいろ)で蒸す。
  3. 蒸しあがった大豆が冷めないうちにミンチの機械に通してすりつぶす。
  4. すりつぶした大豆をなまこ状に成型し、放冷する。
  5. 冷めたなまこを2cm程度の厚さにカットし、稲わらのむしろの上に、斜めに寝かせながら並べる。
  6. 自然に毛カビが生えるのを待つ。(寒仕込みで40~60日程度)
  7. 十分に毛カビが生えた6を、塩・水とともに混合機に入れて撹拌する。
  8. 7を混合機から取り出し仕込み桶に入れ3年間熟成させる。

上記のように、豆麹作りにも熟成にも長い時間を必要とすることから阿波の方言である「寝さす(寝かせるの意)」の語形が名詞化し「ねさし味噌」の名がついたと言われております。

創業当時からの変わらぬ味と「自然生え」という伝統製法を守り続けていきたいという思いで、現在も上記のような作り方を続けておりますが、温暖化が進み「寒仕込み」の時期ですらねさし味噌にとって良い環境が続かないことや、時代を経た蔵自体も「蔵疲れ」という状況に至っていることなど、仕込みの条件は厳しくなっております。新しい製法を模索しながらも、できる限りこの「自然生え」という製法を守っていきたいと考えております。

昔なじみのご贔屓筋様は、このねさし味噌のみでお味噌汁をお作りになられますが、独特の香りと風味を持つ個性の強い味噌ですので、初めてのお客様には、普段お使いの味噌に少量を混ぜて「合わせ味噌」として味噌汁にお使いいただくことをお勧めいたします。その他、煮込み料理、肉・魚などの味噌漬け、味噌炒め、豆鼓の代わりに中華料理の味付けに、など和洋中を問わず様々なお料理にお使いいただけます。

ねさし味噌(明治神宮奉献品)

歴史

このところ、健康志向や食の安心・安全などの観点から和食、とりわけ発酵食品に注目が集まっています。
若い世代の方からは敬遠されがちであった「豆味噌」も、マクロビオテックの調味料のひとつとして紹介されたこともあってか、その良さが見直されています。
当家の「豆味噌」と言えば、嘉永年間から途切れることなく醸造を続けて参りました「ねさし味噌」でございます。

ねさし味噌は大豆と塩だけを原料とする「豆味噌」です。
安土桃山時代に豊臣秀吉から阿波國を拝領した蜂須賀正勝・家政父子が尾張の出身であったことから、蜂須賀家に随行して阿波の地に下った者たちが中京地方の伝統的な豆味噌の製法を当地に伝えたのであろうと考えられています。
つまり、現在も中京地方の伝統の豆味噌として独自の地位を築く「八丁味噌」の製法にそのルーツがあるということになります。
また、もともと当地は稲作にはあまり適さなかったため、藍や大豆の栽培が盛んな地域でした。
ですから、豆味噌の原料確保には事欠かなかったということも、ねさし味噌誕生の要因の一つであったのでしょう。

「ねさし味噌」のねさしとは「寝かせる」の意の阿波の方言「寝さす」が語源。
豆麹を作るのにも、熟成にも長期間を必要とすることからこの名がついたと考えられています。

全国的にみても米味噌や麦味噌よりも生産・消費量とも少ない豆味噌ですが、徳島県においても、ねさし味噌の生産は県西部の限られた地域でのみ行われてきました。
しかしその独特の香りと風味、コクのある味わいは、和食のプロを始めとし、豊かな食卓を追及する人々の間では重宝されております。
味噌汁、味噌漬けと言った従来の使用法にとどまらず、和洋中さまざまなお料理の隠し味としてもお使いいただけます。
さらに近年、各方面の研究において、味噌(殊にねさし味噌のような熟成期間の長いもの)は癌の抑制や抗酸化作用、放射線防御作用などの効用も明らかにされてきています。

昔はそれぞれの家庭で仕込まれていたねさし味噌ですが、消費者の高齢化に伴い自家製造する家庭も激減し、現在ではねさし味噌を醸造する蔵も、ごくわずかとなってしまいました。

嘉永年間の創業当初より、ねさし味噌の醸造を続けて参りました当家では、長い歴史を持つ阿波の伝統の味「ねさし味噌」を今後も守り、後世に伝えていくことを大切な使命と考えております。

独特の風味

初めてねさし味噌をお買いになられるお客様には必ずこうお伝えしています。
「ねさし味噌は独特の強い香りと風味があります」
熟成されたチーズのよう、とでも申しましょうか。
樽から味噌を取り出すときには、蔵中にその香りが満ち、そこにいる者の全身にその香りが移るほどです。
人によっては「いい香り」、人によっては「強烈な匂い」と受け止められるでしょう。
発酵食品ゆえの宿命です。どうぞ、お楽しみください。

調味料として活かす

強い個性を持つねさし味噌ですが、その用途は意外と広範囲にわたります。
お好みに応じて単独で、また合わせ味噌でお味噌汁にお使いいただくのはもちろんですが、三浦醸造所では、かくし味としてお使いいただくことをおすすめしています。

ねさし味噌は大豆と塩だけを原料とした豆味噌のため、大豆タンパクをアミノ酸に分解する酵素の働きが重要になります。
その分、米味噌や麦味噌よりも長い熟成期間が必要となります。

しかし、それこそが濃厚で豊かな旨味を醸し出すことにつながるのです。

こうした特徴を活かして様々な料理にお使いいただくと、おいしさが際だちます。
なすの味噌炒め、さばの味噌漬け、餃子のたね、ミートローフ、麻婆豆腐、おでんや鍋料理、煮込み料理などにお使いいただくことでコクや深い味わいをお楽しみいただけます。


なすの味噌炒め

さばの味噌漬け

餃子のたね

麻婆豆腐

おでん

煮込み料理

その他にも、お客様のアイデア次第で様々な料理にねさし味噌をお試しください。

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