ねさし味噌に始まる当所の味噌づくりですが、五代目は跡を継いだときから、広く世間に用いられている米味噌づくりにも取り組みたいと願っておりました。
そこで研究を重ねて醸造を開始した商品が「五代目杜氏の糀味噌」でございます。この味噌の特徴としては、自家栽培米を当所で製麹、国内産丸大豆とにがり成分を多く含んだ塩を原料に使用、そして麹歩合(米と大豆の比率)は米2に対して大豆1の「二十割麹」で醸造、という点が挙げられます。
徳島には昔から「阿波の御膳味噌」と呼ばれる米味噌がございます。『みそ文化誌』(全国味噌工業協同組合・社団法人中央味噌研究所発行)によりますと、御膳味噌の名前の由来は阿波藩主・蜂須賀氏に供されたことによるもので、幕末の阿波藩民政資料には「御殿様御膳用十五割白味噌」という記述が見られるようです。「十五割」も前述の「二十割麹」と同じく麹歩合を表す言葉ですから、当所の「糀味噌」は阿波の御殿様が食した味噌よりも、さらに贅沢に米糀を使用した味噌ということになります。このように米麹を多く用いることにより、水あめ(市場に出回っている甘口の米味噌には、水あめを原料に加えているものがあります)や砂糖とは違う上品な甘さを醸し出す味噌に仕上がっております。
醸造は以下のような行程で行われます。
- 米を洗米して浸漬(水に浸す)する。
- こしき(大きなせいろ)で蒸す。
- 放冷して麹菌の種付けをする。
- 取り込み(製麹機の中に種付けをした米を入れる)を行う。
- 切り返し(製麹中の麹の中に新鮮な空気を入れる)を二回行う。
- 5.の行程の間に大豆を洗い浸漬する。
- 大豆をこしきで蒸し、熱いうちにミンチの機械に通してすりつぶす。
- 42時間後に出麹(製麹機の中から出来上がった米麹を取り出す)
- 仕上がった米麹とつぶした大豆を冷ます。
- 米麹・大豆・塩・水を混合機に入れて撹拌する。
- 10.を混合機から取り出し仕込み桶にうつす。
- 約1年間仕込み桶の中で熟成させる。
以上の行程を経て醸造される「糀味噌」は、上品な甘味とこくを備えたやわらかな味わいのある逸品に仕上がっております。当所の商品は全て、一切の添加物を使用しておりません。そのためお買い上げ後も発酵が持続いたします。特に「糀味噌」は「ねさし味噌」と比べ発酵が速いため、冷蔵庫での保存をお勧めいたします。
味噌汁、田楽味噌などの嘗め味噌、鍋料理の味付けや和え物など、幅広くご利用いただけます。